導入事例│株式会社ニッポン放送様 2018.11.12
株式会社ニッポン放送様
業務内容:放送法に基づく基幹放送事業(AM/FMラジオ放送)
導入製品:RFデザイン社 HDIP-3000V(ひかり電話音声コーデック)
この度ニッポン放送様へ、弊社取り扱いのRFデザイン製ひかり電話音声コーデック「HDIP-3000V」が導入されました。導入に伴い、ニッポン放送技術スタッフ様にお話を伺うことが出来ました。
Q:導入に至るまでの背景を教えてください。
2024年のISDNサービス終了に伴い、代替のサービスおよび中継機器の選定をしなければならない背景がありました。ISDNが持つ高信頼性や使い勝手が良い点(電話番号発着信が可能)を引き継ぐサービスや製品を探していました。
そのような中で、ひかり電話技術を利用したデータコネクト※1は帯域確保型である点、細かいルーターの設定がいらず自由に電話番号で発着信を可能とする点に惹かれ、ひかり電話音声コーデックHDIP-3000Vの導入を決めました。
Q:具体的な導入の決め手を教えてください。
まず第一に、ルーター等のネットワーク機器設定が不要である点が挙げられます。通常、データコネクトを使用する際は、IPコーデックを接続するルーターへ設定が都度必要となります。そのため「いつでも、だれとでも、つなぐ」ということが困難な環境でした。
しかしHDIP-3000Vは、ひかり電話ルーターにLAN接続するだけで、現場ごとの細かい設定は必要ありません。そして従来のISDNコーデックのように、電話番号での発着信だけで接続を確立できます。「いつでも、だれとでも、つなげられる」という点が高い評価につながりました。
また中継現場では、打合せ用回線も本線とは別に構築する必要がありますが、HDIP-3000Vにはインカムポートがついており、データコネクトのセッションの中に本線とは別に打合せ回線も構築することができるのも魅力です。
肝心のコーデックのアルゴリズムも、NTT研究所が開発したCLEARが採用されていると聞きました。CLEARはデータコネクトで確保される帯域1Mbpsを超えないので、ロスレス音質なのに通信料が全国一律4円/分で済むのも助かります。従量課金とはいえ、中継時間や中継数を考えると、中継のための通信コストも悩みの一つです。市外や県外の通信でコストダウンが図れるのは、ラジオ局として非常に助かるポイントです。
Q:電話番号による発着信のメリットについて詳しく教えてください。
導入以前のIPコーデックで中継回線を構築するには、ルーター等ネットワーク機器の設定が必須でした。データコネクト利用の際には、接続先のひかり電話番号を都度、ルーターへ設定をする必要があり、緊急的につなぐ必要があっても即応できないのが実状でした。
しかしこのHDIP-3000Vであれば、災害やトラブル対応などの緊急時、早急にコーデックをつなぐ必要がある場合でも、細かな設定をすることなく電話番号を入力するだけで、誰でも簡単に回線をつなぐことが可能です。ひかり電話が開通している相手先であれば、すぐに接続することができるのが魅力です。
Q:実際に導入して気づいた点はありますか?
細かいことですが、ボタンがパネル面から突出していないので、中継にも向いていると思います。(突出したボタンやスイッチが付いていると、現場で壊れるリスクがあるため。)
さらに、電源の二重化まで考えられたコーデックが少ない中、HDIP-3000Vには二重電源が標準で装備されているという点もすばらしいと思います。
また液晶表示がシンプルで、操作性が高いと感じています。都度、必要なことだけが表示されるため、今後たくさんのスタッフが使用することを考えると、誰にでも判りやすいというのは大きな利点だと思います。
Q:以前と比べ音声の帯域がかなり広がっていますが、そのあたりの感覚をお聞かせください。
PCMに近い音声伝送だと感じています。ミキシングしやすくディレイが少ないと、現場での評判も非常に良いです。
ISDNコーデックは128kbpsに圧縮した音なので、大きなスピーカーでモニターした際は、どうしてもシュワシュワとした音になってしまうのが気になっていました。しかしHDIP-3000Vに搭載されているCLEARは、1Mbps帯域に収まっているのにPCM相当の音質で、低遅延です。現場では「本社からのOA送返を聞きながらミキシングができる。」との声もあるくらいなので、ちょっとビックリです。
ニッポン放送ではAMだけでなくFM補完放送も実施しているため、ますます高音質への要求が高まると感じています。音楽イベントの番組や、より臨場感を持ったスポーツ中継で威力を発揮すると思います。
Q:導入による今後の可能性を教えてください。
音が良くなったことにより、スポーツに限らず野外などの音楽番組での可能性を感じています。光回線が敷設できさえすれば、現在のISDNと同様に使用することができると感じています。今後は、光回線が現在のISDN並みに利用できるよう、関連する業界&NTT様と一丸となって環境を整備しなければなりません。本製品の普及が進めば、光回線の整備の必要性にも説得力がさらに出てきます。
また来るべき2020年東京オリンピックの放送では、ラジオ局全体が一丸となって準備を進める必要があります。以前であれば、幹事社となった局が音声を分配するという方式が採用されていたため、音声を圧縮、伸長するコーデック伝送を重ねるほど音が悪くなるという問題が避けられませんでした。しかし各局がひかり電話コーデックで繋がれば、幹事局から離れた局でも、良い音でオリンピックの中継音声を放送することが可能になるのではないかと考えています。
Q:今後このコーデック及び松田通商に期待することはありますか?
RFデザイン社は国内メーカーですので、困ったときのレスポンスやサポート対応について、国外メーカーより手厚く迅速なのではないかと期待しています。その上で、コーデックは弊社だけ導入しても大きな効果は得られません。業界全体で導入されて初めて最大の威力を発揮するものですので、松田通商様にはぜひ先陣を切って各局様に導入をアピールしていただき、業界を盛り上げていただきたいと思います。
編集後記
今回ニッポン放送様に取材をさせていただき、機材が実際現場でどのように使用されているのか、また放送にかける熱い思いを直接お聞きすることができました。災害時など、ラジオの重要性が再認識される今日ですが、安定した音声の提供は、技術担当者様や現場スタッフの方々の努力により成り立っているのだということを、身をもって感じることができました。取材に応じていただきましたご担当者様方には、この場を借りて御礼を申し上げます。
※1)データコネクト
NTT東日本と NTT西日本が提供しているデータ通信サービスの名称。データコネクトは、帯域確保型データ通信と説明されることが多い。