未来の音響技術を大阪・関西万博で体験ーAuracast™特別イベントが開催
補聴支援から日常利用まで、Auracast™が描く新しい音声体験
2025.08.29イベント

未来の音響技術を大阪・関西万博で体験ーAuracast™特別イベントが開催

2025年8月21日、大阪・関西万博(EXPO 2025)英国パビリオンのホスピタリティスイートにて、Ampetronic社主催の特別イベント「Audio Technology for the Futureー未来の音響技術」が開催されました。本イベントでは、次世代ワイヤレス音声伝送技術 Auracast™(オーラキャスト)ブロードキャストオーディオをテーマに、補聴支援やコミュニケーション分野における新しい可能性が紹介されました。

テーマとなった「Auracast™ブロードキャストオーディオ」は、Bluetooth® Low Energy Audio(LE オーディオ)の新しい機能のひとつで、音声を無線で複数の受信機に同時配信できる技術です。これまでのBluetooth接続が1対1だったのに対し、この機能では「1対多」の音声共有が可能になり、従来のBluetooth(Classic Audio)よりも低消費電力で高音質な音声伝送を実現します。

イベントの様子1
イベントの様子(壇上:ジュリアン・ピーターズ氏-Ampetronic/Listen Technologies)
イベントの様子2
イベントの様子(壇上:右からエド・ベック氏(Ampetronic|Listen Technologies)、ジュリアン・ピーターズ氏(Ampetronic|Listen Technologies)、マーティン・アームストロング氏(GNヒアリングジャパン株式会社)、関正彦氏(ソニー株式会社)、ヘンリー・ウォン氏(Bluetooth SIG))

業界を代表するパネリストが登壇

世界的なオーディオ関連企業や団体から、Bluetooth SIGのヘンリー・ウォン氏、Ampetronic/Listen Technologiesのエド・ベック氏、ソニー株式会社 シニアネットワークテクニカルマネージャーの関正彦氏、そしてGNヒアリングジャパン株式会社 代表取締役社長のマーティン・アームストロング氏が登壇し、それぞれの取り組みと将来展望を発表しました。

Bluetooth SIGのヘンリー・ウォン氏はAuracastの基本概要と国際的な普及状況を紹介し、この技術が今後の生活や社会に大きな変革をもたらすことを強調しました。特に公共施設での導入が加速しており、2029年までに150万か所以上でAuracastブロードキャストオーディオが利用可能になる見込みが示され、その成長スピードと将来性を印象づけました。

Ampetronic/Listen Technologiesの事業開発マネージャーであるエド・ベック氏は、自社のAuracast配信システム「Auri™」を中心に、英国ブリストルの鉄道駅やシドニー・オペラハウスといった世界的施設での導入事例を紹介。AuriのAuracast送信器は、アナログとDanteによる音声入力や、マルチチャンネル配信に対応しており、設置の容易さと既存の音響機器との高い親和性を備えています。一方、Auracast対応の受信用デバイスが現段階では十分に普及していない状況を鑑み専用のAuri受信器も用意。すでに多様な業界で活用が広がっていることを示しました。

続いてソニー株式会社のシニアネットワークテクニカルマネジャー 関正彦氏は、国内ブランドとしてのAuracastへの取り組みを紹介しました。5月に行われた「こども音楽フェスティバル 2025」は、Auracastを活用した国内初のコンサートであり、聞こえにくさがある子どもたちにこれまでになかった新たな音楽鑑賞体験を提供できたといいます。LE Audioならではの高音質でコンサートを楽しんだ参加者からは、「これまで聴こえなかったような音が聴こえて楽しめた」という意見もあったといい、新たな鑑賞体験の可能性を提示しました。ソニーのAuracast対応コンシューマーデバイスは、イヤホンやヘッドホンといった日常的な製品を通じ、一般消費者が自然に新しい音声体験へ移行できる環境を整えていることを示しました。

最後にGNヒアリングジャパン株式会社代表取締役社長 マーティン・アームストロング氏は、世界トップクラスのシェアを持つ補聴器メーカーの観点から、補聴器ユーザーにとってのAuracastの価値を強調しました。世界人口の約15%が何らかの聴力障害を持っていることに触れながら、日本国内での補聴器の普及率がまだまだ低いことにも言及。聞こえにくさは精神的なストレスや脳への悪影響につながる可能性があると指摘し、Auracastは難聴者に様々な環境で聞こえやすい音を提供できる新たなソリューションであると説明しました。そして、従来Bluetoothが長年にわたり標準技術として広がってきたように、今後はAuracastが次世代の「聞こえ」を支える基盤になると確信していると述べ、難聴者の公共空間における情報アクセス改善の大きな可能性を示しました。

デモンストレーション形式でAuracastを体感

イベントでは、前述したAmpetronic社製Auracast™送信機 「Auri™」 を用いた実演が行われ、来場者全員がAuracast™を実際に体感することができました。各パネリストの発表は同時通訳され、入場時に貸し出されたAuracast™対応レシーバーを通じて、参加者は英語または日本語を選択して聴取することが可能でした。

Auracastの特長のひとつである低遅延でのリアルタイム通訳配信により、言語の壁を越えて講演に参加できる環境が整い、国際色豊かな来場者が集まる万博会場において、Auracastの実用性と将来性が鮮明に示されました。

Auri™送信器
天井に設置されたAuri™送信器
Auri™受信器
配布されたAuri™受信器
言語選択
Auri™受信器で受信言語を選択

豊富なAuracast™対応デバイス展示

Auri™を通じて配信された音声は専用レシーバーのみならず、各社のAuracast対応製品でも受信可能です。展示では以下の機器が来場者に体験されました。

sony製品
「LinkBuds Open」「LinkBuds Fit」「WF-1000X M5」「WH-1000X M6」(ソニー株式会社様)

ソニー株式会社様

<展示デバイス>
「LinkBuds Open」「LinkBuds Fit」「WF-1000X M5」「WH-1000X M6」

SONY製最新Auracast対応イヤホン、ヘッドフォン4機種を展示。Sony Xperia 1 VIと併せて使用することで、Bluetooth LE AudioによるAuracastオーディオを低遅延で受信可能です。LinkBuds Open/Fitは軽量・オープン/フィット感重視のイヤホンとして、WF-1000XM5は高音質・ANC対応の完全ワイヤレス、WH-1000XM6はフラグシップヘッドホンとして、それぞれの使用シーンに応じたAuracast体験を提供します。

GNヒアリングジャパン株式会社様

<展示デバイス>
「リサウンド・ビビア™」Auracast™対応補聴器

騒音下でも鮮やかな聞き取りを実現する世界最小AI補聴器。補聴器としての機能だけでなく、専用アプリからワンタッチでAuracast放送に接続できる高い接続性を誇ります。

Auri™送信器と別途デモンストレーションも実施済み。詳細はこちら

「リサウンド・ビビア™」
「リサウンド・ビビア™」Auracast™対応補聴器(GNヒアリングジャパン株式会社様)
cear
「Cear pavé」BTスピーカー(シーイヤー株式会社様)

シーイヤー株式会社様

<展示デバイス>
「Cear pavé」BTスピーカー

どんなステレオ音源でも再生音をリアルタイム解析・分解・再構成することで3Dサウンドを生成する「Cear field®」機能を搭載した9cmボディのBTスピーカー。スマートフォンと連携することで、簡単にAuracast™の受信が可能です。

NTTソノリティ株式会社様

<展示デバイス>
「nwm ONE」オープンイヤー型 オーバーヘッド 耳スピーカー

NTT独自のPSZ(Personalized Sound Zone)技術により、音漏れを抑えつつ開放的なリスニング体験を実現する「耳をふさがないイヤホン」。こちらも同じく専用アプリとの連携で、Auracast™受信機能を備えています。

nwm ONE
「nwm ONE」(NTTソノリティ株式会社様)

Auri™ 導入事例の紹介

今回のイベントでは、すでに世界各地で実運用が進むAuri™の導入事例も紹介されました。補聴支援や公共案内におけるAuracast™の効果が具体的に示され、来場者にその実用性が強く印象づけられました。

シドニー・オペラハウス

シドニー・オペラハウス(オーストラリア)

全てのパフォーマンスエリアにAuri™システムを導入。来場者は公演前にクロークでAuracast™受信機を受け取り、ヘッドホンまたはパーソナル誘導ループとセットで利用できます。Bluetooth SIGおよびGN Hearingとのトライアルイベントを経て、会場全体で本格採用に至りました。

ブリストル・テンプル・ミーズ駅

ブリストル・テンプル・ミーズ駅(英国)

世界初のAuracast™対応鉄道駅として注目を集めています。チケットホールやコンコース、ホームにAuri™送信機を設置。列車の運行案内やホーム変更の通知に活用されています。この取り組みは世界各地の鉄道駅や交通インフラでのトライアル導入に広がりを見せています。

※事例詳細はこちら

エブリマン・シアター

エブリマン・シアター(英国)

アクセシビリティ向上のためにAuri™システムを導入した英国初期の劇場の一つです。3台のAURI送信機を備え、観客はWi-Fiに接続する感覚で簡単に音声ストリームへ参加でき、補聴器やイヤホンで直接高音質の音声を受信可能。「人生を変える体験」と称されるなど、観客から高い評価を得ています。

<その他の導入事例>
オックスフォード大学(英国)、ベルリン・フィルハーモニー(ドイツ)、コンタクト・シアター(英国)、オスロ NYE シアター(ノルウェー)、スタジアム・タラナキ(ニュージーランド)、WYO シアター(米国)など

今後の国内普及に向けて

今回のイベントは、Auracast™技術が日本国内においても大きな可能性を秘めていることを強く示す機会となりました。高齢化に伴い拡大が予想される補聴支援分野はもちろん、日常生活における新たな音とのつながりや、エンターテインメント体験の拡張など、多岐にわたる可能性が提示されました。公共交通機関や劇場、教育現場、会議など、多様な場面での活用が期待されており、特にイヤホン・ヘッドホン・補聴器と連携することで、「聞こえのバリアフリー」を実現する基盤技術として大きな注目を集めています。

Ampetronic社製 Auri™ は、設置の容易さ、マルチチャンネル配信対応、既存の音響システムとの高い親和性を備えており、国内普及を推進する中核製品となる存在です。

弊社では現在、国内市場におけるAuracast™の可能性を広く知っていただくため、Auri™の製品デモンストレーションを随時実施しております。導入をご検討中の企業様や、技術にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

MTC&Ampetronic

「Auracast™」とは?解説はこちら▼

誰でもわかる AURACAST™

Auracast™︎ワードマークおよびロゴは、Bluetooth SIG, Inc. が所有する商標です。
Bluetooth®ワードマークおよびロゴは、Bluetooth SIG, Inc. が所有する登録商標です。